血漿交換療法(Plasmapheresis)は、患者さんから血液を取り出し、その血液から血漿成分を分離し、分離した血漿を直接、あるいは膜分離や吸着等二次的に処理して病因物質を除去することを目的とした治療法です。
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プラスマフェレシスの原理
血液は遠心分離または放置すると比重の差により、血漿と血球に分離します。血漿分離器により簡単に血液から血漿の分離が行えます。血漿分離器の分離膜には無数の小さな孔があいており、孔を通過する血漿と通過しない血球成分にわかれます。
プラスマフェレシスの方法
プラスマフェレシスには、以下に示す4つの方法があります。
治療法 | 内容 | 使用する医療機器名 | |
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単純血漿交換療法 (Plasma Exchange, PE) | 血漿分離器で分離した全ての血漿を廃棄し、等量の置換液と交換する治療法です。 | プラズマフローOP (OP-02D/05D/08D) エバキュアープラス (EC-4A10D) 使用装置: 血液浄化装置ACH-Σ | – |
二重濾過血漿交換療法 (Double Filtration Plasmapheresis, DFPP) | 血漿分離器で分離した血漿を、さらに血漿成分分離器で濾過し、血漿成分分離器を通過できた血漿を返血する治療法です。 血漿成分分離器を通過できなかった血漿成分を廃液する場合はそれと等量の置換液とともに返血します。 | カスケードフローEC (EC20W/30W/40W/50W) | |
血漿吸着療法 (Plasma Adsorption, PA) | 血漿分離器で分離した血漿を、さらに血漿吸着器に通過させ、疎水性相互作用、静電相互作用、抗原抗体反応等を利用して病因物質を吸着除去する治療法です。 | イムソーバTR (TR-350) イムソーバ (PH-350) プラソーバBRS (BRS-350) | |
直接血液灌流(direct hemoperfusion,DHP) | 取り出した血液を直接吸着器に通し、病因物質を吸着除去する治療法です。ヘモソーバCHSを用いたDHPは活性炭の微細孔に入り込む分子量100~5,000ダルトンの物質の可逆的物理的吸着を用いた治療法です。 | ヘモソーバCHS(CHS-350) | – |
単純血漿交換療法(PE:Plasma Exchange)
膜型血漿分離器により分離された血漿成分を全て排液し、その排液と同等量のFFP(新鮮凍結血漿)又はアルブミン溶液にて置換する方法です。
単純血漿交換療法(PE)の特長
凝固因子の補充が可能。
(FFP使用の場合)病因物質を含む全ての血漿成分を排液する。
単純血漿交換療法(PE)のデメリット
他人の血漿を使用するため、感染等の可能性がある。
微小凝集物(マイクロアグリゲート)の混入による有害事象の可能性がある。
貴重かつ高価なFFPが大量に必要。
体外循環による血圧低下などの一般的有害事象が起こる可能性がある。
詳細は当該治療法に使用する医療機器の電子添文を参照。
二重濾過血漿交換療法(DFPP:Double Filtration Plasmapheresis)
膜型血漿分離器によって分離された血漿成分をより小さな穴(13~37nm)の膜型血漿成分分離器(カスケードフローEC)に通すことにより高分子量成分を除去し、アルブミン等の低分子量成分を補充液(アルブミン溶液)とともに体内に戻す方法です。
二重濾過血漿交換療法(DFPP)の特長
少量の補充液で施行可能。
アルブミン溶液を補充液として使用するのでFFP使用の血漿交換療法に比べ感染等の可能性が少ない。
穴の大きさの違う血漿成分分離器を使い分けることで、除去する血漿蛋白の範囲を変えられる。
二重濾過血漿交換療法(DFPP)のデメリット
アルブミンの損失が多少ある。
分子量分画による分離(膜の穴による分離)のため、必要蛋白も除去される可能性がある。
体外循環による血圧低下などの一般的有害事象が起こる可能性がある。
詳細は当該治療法に使用する医療機器の電子添文を参照。
血漿吸着療法(PA:Plasma Adsorption)
膜型血漿分離器により分離された血漿成分を吸着器に通し、選択的に病因物質を除去する方法です。
アルブミン等の有用な血漿成分の損失が少ないので補充液を必要としません。
血漿吸着療法(PA)の特長
補充液の必要がなく感染の可能性がない。
特異的・選択的な吸着により、病因物質を除去可能。
疾患によって吸着器の選択が可能。
血漿吸着療法(PA)デメリット
体外循環による血圧低下などの一般的有害事象が起こる可能性がある。
詳細は当該治療法に使用する医療機器の電子添文を参照。
直接血液灌流(DHP: direct hemoperfusion)
取り出した血液を直接吸着器に通し、病因物質を吸着除去する治療法です。
直接血液灌流(DHP)の特長
血液回路の構成がPAと比較して単純であり、操作が簡便。
専用装置が不要。
詳細は当該治療法に使用する医療機器の電子添文を参照。